ドラッグストア、今度はシャンプー棚の前。
「もう、
なんでもいいや…」
みはるさん、今度はシャンプー棚の前で固まっている。

「選べない理由」を知ってから、チョッとだけ気が楽になった。
洗剤は「まあ、こっちでいいか」と選べるようになった。棚の前で自分を責めることも、なくなった。
でも、シャンプーはそうもいかない。
かえでは学校の体育の後にさっぱり洗いたい。あやめは「いい香りのがいい」とこだわる。みはるさん自身も最近、髪のパサつきが気になる。
「3人分、全部調べなきゃ…」
夕飯のとき、さとるさんに聞いてみた。
「シャンプー、どれがいいと思う?」
「なんでもいいよ」
……いつもそう。でも、ふと気になった。さとるさん、自分のシャンプーだけはずっと同じのを使ってる。「なんでもいい」って言いながら、替えないんだ。
まあ、今はそれどころじゃない。
——子どもたちが寝た後。リビングでスマホを開く。「シャンプー おすすめ 家族」で検索。
出てくるのは「人気ランキングTOP30」「成分徹底比較」…タブが5つ、6つと増えていく。読めば読むほど、わからなくなる。

1時間調べて、結局決められない。スマホを閉じて、ため息。
洗剤のときは、棚の前で止まっていた。今度は、調べてるのに、たどり着けない。頑張ってるのに報われない——それが、いちばん疲れる。
「もう、なんでもいいや…」
そんなこと、ありませんか?
もし、「調べても調べても決められない」と感じているなら、チョッとだけ、立ち止まってみてください。
疲れるのは、「全部調べよう」としているから。
かえでに合うシャンプー。あやめに合うシャンプー。自分に合うシャンプー。全員分の「いちばんいいもの」を探そうとしたら、そりゃ疲れます。
でも、考えてみてください。シャンプーって、1ヶ月か2ヶ月で使い切りますよね。一生に一度の買い物じゃない。
合わなかったら、次に替えればいいんです。

みはるさんは、ふと思い出した。
「そういえば——洗剤も、最初から『これ!』って選べたわけじゃなかった。使ってみて、まあまあだったから続けてるだけ」
「それって、すでに『合わなかったら次』をやってたってこと?」
そうなんです。
「全部調べてから選ぶ」必要はないんです。
「ここだけ見ておけば、まあまあ大丈夫」というポイントがあれば十分。
じゃあ、どこを見ればいいのでしょう?
おすすめは、これです。
「3つだけ決める」
たとえばシャンプーなら、
- 誰の?(家族共用? それとも自分用?)
- 何を大切に?(香り? 洗い上がり? コスパ?)
- 形は?(ボトル? 詰め替え? トラベル用?)
この3つを決めるだけで、見るべき商品は、ぐっと減ります。
全部の情報を集めるんじゃなくて、「自分に関係あるところだけ見る」。それだけで、景色が変わります。
次の週末、みはるさんはまたドラッグストアに来ていた。
棚の前で、つぶやいてみる。
「3つだけ決める。自分用。パサつきが気になるから、しっとり系。詰め替えがあるやつ」
それだけで、視線が迷わなくなった。さっきまで全部同じに見えたパッケージが、「これは関係ない」「これは関係ある」に分かれていく。
ずらっと並ぶ棚の中で、最後に迷ったのは3つだけ。いつもなら棚の前で10分以上迷っていたのに、今日は3分で選べた。
「あれ。チョッと軽い。肩の力が抜けてる」
あやめの分も、同じようにやってみた。
「あやめは香りが大事。じゃあ、香りで3つに絞ろう」
しっとり系のシャンプーをひとつ、手に取った。
「まあ、これでいいかな」
初めて、その言葉が軽く感じられた。
帰り道、あやめが聞いてきた。
「ママ、なんでそのシャンプーにしたの?」
「しっとりするやつがよかったから」
「なんでしっとりがいいの?」
「……なんでだろうね」
答えられなかった。でも、不思議と嫌な気持ちじゃなかった。

「全部じゃなくていいんだ」
合わなかったら、次に選び直せばいい。
チョッと肩の荷が下りませんか?
でも、こう思いますよね。
「3つって、何を基準に決めればいいの?」
「何を大切にしたいか」って、すぐには出てこないかもしれませんね。次は、その「自分なりの基準」を一緒に見つけていきましょう。「私はこれでいい」と言えるようになるために。
