運動会の朝、レジャーシートの上。
「また、
同じ質問。」
みはるさんの隣には、ご近所のまみがいた。

娘のあやめと、まみの娘のさきが同じクラス。毎年、レジャーシートを隣同士に並べて応援している。
あやめと、双子のかえで。ふたりの水筒は、この運動会に合わせて新しくした。容量と、洗いやすさと、色。3つだけ見て選んだ。「ポイントを絞る」のは、だいぶ慣れてきた。
「みはる、その水筒かわいいね。なんでそれにしたの?」
「また、同じ質問。」
この前、あやめにも聞かれた。「なんでそのシャンプーにしたの?」——あのとき、答えられなかった。水筒も、きっと同じだ。
「……なんとなく、これがいいかなって」
まみは「いいじゃん、なんとなくで」と笑った。嫌な感じじゃなかった。
でも、また「なんとなく」としか言えない自分に、チョッとだけモヤモヤする。
「選べるし、ポイントだって絞れる。でも、『なんで?』と聞かれると、言葉に詰まる」
そんなこと、ありませんか?
もし、「なんとなく」としか言えない自分にモヤモヤしているなら、チョッとだけ、考えてみてください。
「なんとなく」は、「何も考えていない」のとは違います。
- 「この色、なんか好き」
- 「持った感じが、しっくりくる」
- 「前に使って、まあまあよかった」
それで、もう選べている。ただ、まだ言葉になっていないだけ。

みはるさんは、ふと思い出した。
「洗剤も、『まあまあだったから続けてた』。それって、『特に不満がなかった』っていう、ちゃんとした基準で選んでたってこと?」
「さとるさんも。『なんでもいいよ』って言いながら、自分のシャンプーだけはずっと同じ。あれも『なんでもいい』じゃなくて、うまく言えないだけだったのかも」
そうなんです。
基準は、最初から完璧じゃなくていいんです。
「なんとなく」の中に、もう芽が出ています。
じゃあ、どうすれば「なんとなく」が言葉になるのでしょう?
むずかしく考えなくて大丈夫です。次に何かを選んだら、自分にひとこと聞いてみてください。
「なんで、これにしたんだろう?」
色が好きだったとか、安かったとか、友達が使ってたとか。理由は何でもいいんです。大事なのは、「自分がどう感じたか」に気づくこと。
これを続けていると、「あ、私って見た目を気にしてるんだな」「コスパより、使い心地が大事みたい」——そんな発見があるかもしれません。
運動会の帰り道。みはるさんは、まみと歩いていた。
並んで歩きながら、聞いてみた。
「まみは買い物のとき、どうやって決めてるの?」
「私もけっこう迷うよ。全部はわかんない。でも、チョッとずつ見えてくる感じかな」
まみも、全部わかってるわけじゃないんだ。それが、なんだかホッとした。
角でまみと別れて、あやめの水筒を眺めながら、つぶやいてみる。
「なんで、これにしたんだろう?」
容量と、洗いやすさと、色。色は、ラベンダー。あやめが「かわいい!」って喜ぶ顔が浮かんだ。

「私、あやめの笑顔が見たくて、この色にしたんだ」
「胸が、じんわり温かい」
夕飯の支度をしながら、さとるさんにも聞いてみた。
「ねえ、さとるさんのシャンプー、なんであれにしてるの?」
「ん? 匂いが好きだから」
即答だった。さとるさんも、ちゃんと基準を持っていた。言葉にするのが得意じゃないだけで。
「まみも、さとるさんも。みんな、自分なりのやり方で『これでいい』を見つけてる」
なんとなく、次は選べそうな気がした。
「なんとなく」にも、理由があったんだ
「なんで?」と、自分に聞いてみる。
その繰り返しが、「自分の基準」を育てていきます。いきなり上手になる必要はありません。
ここまで来たあなたは、もう「選ぶための準備」ができています。
「じゃあ、かしこスタイルって、どういうこと?」
「準備」と「実践」は、チョッと違いますよね。次は、いよいよ、えらびのたねが大切にしている考え方、「かしこスタイル」の話。一緒に考えてみませんか?
