日曜日、ホームセンター。
「これで、
かしこスタイル…
なのかな。」
気がつくと、家族はそれぞれの売り場に散っていた。

双子のかえでは、工具コーナーへ。「ドライバーセット見てくる!」あやめはキッチン雑貨の棚で、水色のコースターを手に取っている。
さとるさんは園芸コーナーで、ハーブの苗を選んでいた。迷っている様子はない。この前聞いたときも即答だった。「匂いが好きだから」って。
「みんな、それぞれ自分の買い物をしてる」
前は「何がいいの?」と聞かれるたびに、困っていたのに。この数か月で、チョッとだけ変わったことがある。
洗剤は、「泥汚れに強いやつ」と決めて、棚の前で迷わなくなった。シャンプーは、「自分用はしっとり系」と絞って、スマホで延々と調べることが減った。水筒は、「あやめの笑顔が見たかったから」と、まみに聞かれても答えられた。
「これで、かしこスタイル…なのかな。」
さとるさんも、かえでも、あやめも。みんなそれぞれ、自分なりの「これがいい」を持っている。
でも。「みはるさんは、どうやって選んでるの?」と聞かれたら——うまく説明できる気がしない。
「選べるようにはなった。理由も、少しは言えるようになった。でも、『自分のやり方』と呼べるほどのものなのかな」
少しは選べるようになったのに、なんだか自信が持てない。そんなこと、ありませんか?
それで、いいんです。
「自分のやり方」と呼べるものが、まだなくても大丈夫。えらびのたねが「かしこスタイル」と呼んでいるのは、完璧に選べる人のことじゃありません。

カートの中に、ドライバーセットと、水色のコースターと、ハーブの苗。みんなの「これがいい」が、少しずつ集まってきた。
フードコートで一息ついていると、まみとばったり会った。娘のさきの習い事の送り迎えの合間だという。

「みはる、最近買い物で悩まなくなったでしょ。このあいだも水筒、パッと選んでたし」
「え、そうかな…。でも、何か特別なことをしてるわけじゃないよ。まみは、どうやって選んでるの?」
まみは、少し考えてから言った。
「んー、迷ったときに『私は何を大切にしたいんだっけ?』って、チョッとだけ立ち止まるようにしてる。完璧に選べてるわけじゃないよ。でも、立ち止まれるだけで、チョッと安心するの」
「特別なことじゃなかった。迷ったら、チョッとだけ立ち止まる。まみのやり方って、それだけなんだ」
そうなんです。
かしこスタイルは、「立ち止まれる人」のこと。
- 迷ったときに、チョッとだけ立ち止まれる人
- 「私は何を大切にしたいんだっけ?」と、自分に問いかけられる人
- 選んだ後も、「次はこうしてみよう」と思える人
大きな変化じゃなくていいんです。「チョッとだけかしこい選択」を、少しずつ積み重ねていく。
それが、「かしこスタイル」です。
じゃあ、どこから始めればいいのでしょう?
おすすめは、「小さく試すこと」。いきなり大きな買い物じゃなくていい。まずは、いつもの買い物で試してみてください。
「3秒だけ、立ち止まる」
やることは、たった3つ。
- 棚の前で、「今日は何を大切にしよう?」と自分に聞く
- 気になったものを、3つくらいに絞る
- 「まあ、これでいいかな」で選んでみる
それだけで、かしこスタイルの第一歩です。
うまくいかなくても、大丈夫。「今日はうまく選べなかったな」と思えたなら、それも立派な一歩です。
まみと別れて、みはるさんはもう一度、売り場に戻った。
キッチン用品のコーナー。食器用スポンジ。いつもなら、「なんでもいいや」で手に取るところ。
「3秒だけ、立ち止まる」
「今日は…泡立ちがよくて、手にやさしいやつがいいな」

3つ手に取って、握り心地をたしかめて、ひとつ選んだ。「まあ、これでいいかな」。別に、特別なことをしたわけじゃない。
帰りの車の中。後部座席で、かえでとあやめがおしゃべりしている。あやめが、ふと聞いてきた。
「ママ、今日のスポンジ、なんでそれにしたの?」
また来た、あやめの「なんで?」。シャンプーのときは、答えられなかった。でも今回は、チョッとだけ違った。

「泡立ちがよくて、かえでも手伝いやすそうだったから」
「完璧な理由じゃない。でも、自分の言葉で言えた」
信号待ちで、さとるさんが後ろの席の苗をちらっと振り返って、チョッとだけ笑った。あれも、さとるさんの「これがいい」だ。
「次は、何を選ぼうかな」
家に着いて、車を降りる。
「足が、チョッとだけ軽い」
迷ったら、3秒だけ立ち止まる。それが、私の『かしこスタイル』
かしこスタイルは、一日で身につくものじゃありません。
うまくいかない日があっても、また3秒。その繰り返しが、いつの間にか「かしこく暮らす」につながっていきます。
完璧な選択じゃなくていい。「チョッとだけかしこく」で、いい。
かしこスタイル、ここから始めましょう。
次は、暮らしの中へ。みはるさんが、選ぶ前に何を見ているかを、子どもの持ち物や台所道具など、分野ごとにたどります。
