しまってあった、箱

夕方のリビングには、暖房が入っていた。窓のすぐ横で、加湿器が小さな音を立てている。

テーブルの端に温湿度計を置いて、1週間ほどになる。夕方の湿度は、40%の前後を行ったり来たりしていた。東京都の指針にある家の目安、40〜60%の、下の端のあたりだ。そして加湿器は、朝には、いつも空になっている。

みはるさんは、収納から加湿器の箱を出した。11月に本体を出したあと、箱は、そのまましまってあった。

箱の横に、小さく数字が並んでいた。「木造和室 5畳」「プレハブ洋室 8畳」。

この加湿器を選んだのは、前の冬だった。そのとき、この数字は見ていなかった。

うちのリビングは、何畳だっけ。マンションの間取り図には、リビングとダイニングとキッチンで、12畳と書いてある。

「うちは、どっちの数字?」

選ぶ前に、見る所

箱の畳数は、うちの広さで読む

加湿器の箱や仕様の欄には、たいてい畳数が2つ並んでいます。木造の和室と、プレハブの洋室。1時間に出せる水の量から決めた目安で、同じ1台でも、建物の造りによって、合う広さが変わります。

畳数は、うちの広さで読む

マンションのように、すき間の少ない部屋は、プレハブの洋室の数字で見るように、と案内しているメーカーもあります。リビングとキッチンがひと続きなら、つながった広さで見ておくのが確かです。部屋が畳数より広いと、湿度は上がりにくくなる、と取扱説明書に書いている物もあります。

真上から見たリビングと台所(12畳)の絵。西の窓の側の3分の2ほどに緑を重ねた所が8畳の目安で、台所の側の4畳分が足りない。部屋より少し大きい点線の枠が14畳の目安
真上から見たリビングと台所に、8畳と14畳の目安を重ねた絵。プレハブの洋室の数字で。

使う時間、タンク1杯でもつか

加湿が要るのは、主にエアコンなどで暖房している時間です(東京都の指針)。リビングなら、家族が集まって暖房をつけている、朝や、夕方から寝るまで。寝室で、暖房をつけて寝るなら、寝ているあいだ。取扱説明書の「連続加湿時間」は、その運転で、加湿の量を最大にしたまま続けたとき、タンク1杯が空になるまでの時間です。だいたい、タンクの水の量を、1時間に出す量で割った数。使う時間より短ければ、途中でタンクを洗って、入れ直すことになります。

毎日の水替えの、その先の手入れ

タンクの水を毎日入れ替えて、中を洗う。ここまでは、どの型でも同じです。違うのは、その先。

  • スチーム式(蒸気で出す型):水あかを落とす手入れ。
  • 気化式(フィルターに水を含ませて気化させる型):フィルターを洗ったり、替えたり。
  • 超音波式(超音波で霧にする型):水の中の雑菌も霧と一緒に飛びやすいので、こまめな水替えと掃除。
  • ハイブリッド式:温めた風を当ててフィルターで気化させる型と、温めた水を超音波で霧にする型があります。
加湿器の方式 4 つの中のしくみの絵。スチーム式はヒーターで水を温めて蒸気を出し、手入れは水あかを落とす。気化式はファンの風をぬれたフィルターに当て、フィルターを洗う・替える。超音波式は底の板の振動で霧にし、こまめな水替えと掃除。ハイブリッド式は温めた風をフィルターに当て、手入れは型によって違う
中のしくみの絵。ハイブリッド式は、温風とフィルターの型を描いています

売り場の札に書いてある方式と、フィルターがあるかを見ておきます。フィルターのように、買い足す物があるかも見ておきます。

電気を抑えたいなら、ヒーターのない型。フィルターの手入れを減らしたいなら、フィルターのない型。小さな子がいるなら、熱い蒸気の出ない型か、手の届かない所に。家によって、合う1台は変わります。

畳数は、うちの広さで。使う時間と、その先の手入れも。

週末、家電の売り場で

週末、家族4人で、家電の売り場へ行った。車を運転したのは、夫のさとるさん。

加湿器の棚には、手のひらに乗るほどの物から、幅のある四角い物まで並んでいた。みはるさんは、箱の畳数を、プレハブの洋室のほうで読んでいった。うちは、12畳。14畳の1台の札には、連続加湿時間も書いてある。夕方から寝るまでなら、足りる。

隣には、19畳の1台があった。前から見ると、同じ大きさ。奥行きが、少しあるだけだ。

家電の売り場の加湿器の棚。前から見て同じ大きさの、白い四角い加湿器が2台並び(どちらも右に縦長の半透明のタンク)、チョコレート色の袖の手が左の札に触れ、黒いダウンの袖の手が右の1台を指さしている

「数字の大きいほうが、早く湿るんじゃない?」

さとるさんの言うとおり、大きいほうは、1時間に出す水が多い。でも札を並べると、タンクは大きいのに、空になるまでの時間は、少し短かった。

「電気代は?」

札の数字では、大きいほうが、電気も多く使う。

「うちが12畳なら、そっちでいいんじゃない」

さとるさんは、14畳の箱を指さした。

値段は、前の加湿器より、ずっと高い。温湿度計をスマホで頼んだのも、ついこのあいだだ。見本の1台のタンクを、外してみた。持つ所がついている。水を入れたら、両手で運ぶ重さだろう。毎日の水のほかにも、ときどき洗う所がある。買い足す物もある。

高い。でも、うちの広さに合う。夕方から寝るまで、もつ。洗う所も、分かった。ふたりで、もう一度、札を読んだ。それから、みはるさんは、14畳の箱をカートに載せた。

「じゃあ、前のは?」と、娘のあやめが聞いた。「私の部屋に置きたい」

あやめの部屋にも、エアコンがある。起きて自分の部屋にいるあいだ、つけている。あやめの部屋なら、8畳の目安に収まる。

「毎日洗うの?」と、双子の兄のかえでが言った。「じゃあ、いい」

かえでの部屋には、要らないらしい。

家に帰って、置き場所を決めた。新しい加湿器の取扱説明書には、冷気や日差しの当たる窓際から離して、エアコンの温風が直接当たらない所に、とあった。

置き場所は、窓のすぐ横ではなく、ソファの向かいの壁の、窓から遠い隅。壁からは、30cm以上あけた。これからは、暖房をつけている間だけ、つける。

その夜、流しで

夕飯のあと、みはるさんは、流しの小さな灯りをつけた。

新しい加湿器のタンクを外して、洗う。細長い四角で、持つ所がついている。

あやめが、円筒のタンクを抱えて、台所に来た。

「自分でやる」

ふたりで、流しに並んだ。

夜の台所の流し。灯りの下で、大人の手が持つ所のある細長い四角のタンクをすすぎ、隣で子どもの手が、横に水の量を見る細い窓のある白い円筒のタンクを洗っている

洗うタンクは、ひとつ増えた。洗う手も、ひとつ増えた。