はじめて、動かす
みはるさんの家のリビングで、前の加湿器は、朝には、いつも空になっていた。しまってあった箱を見ると、畳数は、プレハブの洋室で8畳。うちのリビングは、12畳だった。
週末の午後、みはるさんは、売り場から帰ってすぐ、新しい加湿器の箱を開けた。白くて、四角い1台。前の加湿器より背は低いのに、横に幅がある。
右側の細長いタンクを外して、台所で水を入れる。取扱説明書には、満水にすると重くなるので、両手でしっかり持つように、とある。

タンクを戻して、運転のボタンを押した。しばらくすると、ソファにいた夫のさとるさんが、鼻を動かした。
「なんか、におわない?」
取扱説明書に、書いてあった。初めて使うときは、ヒーターの熱で、吹出口から「防錆油の焼ける臭いがすることがあります。1時間ほどでおさまります」。
「1時間くらいで、消えるって」
みはるさんは、そのまま、手入れのページをめくった。タンクの水は、毎日入れ替える。加湿器のフィルターは、2週間に1回、水で洗う。月に1回は、クエン酸につける。そして、トレイの上に敷く、半透明の使い捨てのカバー。
「なんで、ここだけ使い捨てなんだろう」
石油ストーブの、会社
作ったのは、ダイニチ工業。新潟の会社で、1957年に石油コンロを作るところから始まり、石油ストーブや、ファンヒーターを作ってきた。
加湿器を始めたのは、2003年。会社は、それを「石油燃焼機器の専門メーカーとして培ってきた技術を活かし」たと書き、「加湿器のメーカーとしては後発」とも書いている。
お弁当の容器から
会社のページに、こんな一文がある。「加湿器を使わない理由で多いのは「お手入れに手間がかかる」ということ」。
水を使う加湿器は、トレイにも水が残って、汚れがたまる。そのトレイを洗う手間を、なくせないか。会社によると、開発部の社員が思いついたのは、ある日の昼、宅配のお弁当の容器に敷かれたカバーを見たときだった。着想から、商品になるまで約10年。最初に載ったのは、2019年の大きい型だった。
カバーは、トレイの形をした、薄い半透明の器のような物だ。

この大きさの型に載ったのは、2021年。トレイも、中のつくりも見直し、水の高さを見る部品を小さくしなければ、載らなかった。会社のページは、それを「わずか3㎝角の壁」と書いている。地元の新潟で、その部品を作れる会社に出会って、量産にこぎつけた。
2021年度には、この型のシリーズ(HD-RXTシリーズ)が、グッドデザイン賞を受けている。受けたのはその年の型で、この型そのものではない。審査の評には、「そのユーザーの手間を軽減させるアイディア」とある。
2週間後の、しるし
加湿器の上の操作パネルで、お手入れのしるしが、赤く点滅していた。説明書のとおり、コンセントに差してから、2週間だった。
みはるさんは、タンクを外して、トレイを引き出した。加湿器のフィルターと、トレイの仕切板を外して、流しで洗う。トレイの上のカバーは、そのまま。1シーズン使う物だ。トレイに残っていた水だけ、捨てた。
元に戻すと、横で見ていた娘のあやめが、お手入れのリセットのボタンに指をのせた。

「何秒?」
「3秒」
あやめは、声に出して3つ数えた。赤い点滅が、消えた。
合う家、合わない家
マンションなどの12畳前後のリビングなら、合う1台
木造の和室では、目安は8.5畳までです。マンションは、プレハブの洋室の目安(14畳)で見る、と案内するメーカーもあります。加湿器の選び方で見る3つに当てはめると、こうなります。
- 畳数:プレハブの洋室で14畳、木造の和室で8.5畳。
- 使う時間:タンクは5.0L。標準運転で、加湿の量が最大のまま続けたとき、約10時間(取扱説明書の仕様)。
- その先の手入れ:トレイ本体の水洗いを、使い捨てのカバーの取り替えに。フィルターは2週間に1回の水洗いと、月に1回のクエン酸。
合うのは、こんな家
- マンションなど、すき間の少ない12畳前後のリビングで使いたい。プレハブの洋室の目安で14畳です。
- 手入れの中で、トレイを洗う手間を減らしたい。トレイには、使い捨てのカバーを敷きます。1シーズンを目安に、カバーごと取り替えるので(取扱説明書の1シーズンは6か月)、トレイ本体の水洗いは要らない、と作り手は書いています。トレイに残った水は、毎日捨てます。
- 子どもがいて、吹き出す風が熱くない型がいい。温風を当てて加湿するときも、「吹出口より吹き出す風は暖かくありません」(取扱説明書)。北海道立消費生活センターのテスト(2019年)でも、「吹出口は熱くなりませんでした」。試験したのは、同じ作り手の別の小さい型(2018年の型)で、この型ではありません。倒れると止まり、ボタンが効かないようにする設定(チャイルドロック)もあります。
合わないのは、こんな家
- 電気を抑えたい。標準運転で最大163W。最大のまま1日8時間・30日使うと、約1,200円です(1kWh 31円、家電公取協の目安で計算)。eco運転は最大12W。ヒーターのない型は、方式として、電気が少なくて済みます。
- フィルターの手入れを、もっと減らしたい。2週間に1回の水洗いと、月に1回のクエン酸のつけ置きがあります。東京都の指針によると、どの加湿器も、手入れを怠ると、中で雑菌やカビが増えることがあります。
- まわりを広くあけられない。高さと幅が37.5cm、奥行き17.5cm。左右と後ろに30cm以上、上に1m以上あけます。
- 重いタンクを運びたくない。5.0Lのタンクを、毎日、台所まで運びます(水だけで約5kg)。
- 買い足す物を持ちたくない。カバーと抗菌アタッチメント(タンクのキャップにつける部品)を、1シーズンごとに替えます(合わせて約2,500円)。フィルターは5シーズンに1回(2,530円)。どれも作り手の公式ショップの値段で計算しました(2026年10月1日)。
- 部屋が広い、または木造。上の畳数より広いなら、同じシリーズの大きい型(HD-RXT726・926。1時間に700mL・860mL、プレハブの洋室で19畳・24畳、木造の和室で12畳・14.5畳)があります。
- 値段を抑えたい。値段は、下の「買える所」に店ごとに書いています。店によって値段は違います。
この1台の要点
- 型番ダイニチ工業 ハイブリッド式加湿器 HD-RXT526(2026年モデル)
- 畳数プレハブの洋室14畳、木造の和室8.5畳(1時間に500mL)
- 大きさ高さ37.5×幅37.5×奥行き17.5cm、約4.6kg。タンク5.0L
この1台を買える所
もう少し詳しく
- 色サンドホワイト・ショコラブラウン・ホワイト×ブラックの3色(みはるさんの1台はサンドホワイト)
- 方式ハイブリッド式。湿度が低いうちは温風を当てて気化させ、設定に近づくと風だけで気化させる
- 電気と音標準運転で最大163W、eco運転で最大12W。運転の音は、標準で13〜30dB(作り手の数字)
- 運転標準・静音・eco・のど・肌(室温に合わせて湿度を加減する)・ターボ(最長1時間)・おやすみ快適(寝るときに風を弱め、約10時間で止まる)。タイマー、チャイルドロック。倒れると止まる
- 湿度設定は50〜70%(5%刻み)。家の湿度の目安は、東京都の指針で40〜60%。取扱説明書は、寝るときや、部屋の結露が気になるときは「50%」と書いています。本体の湿度の表示は目安で、ほかの湿度計と一致しないことがあります
- 手入れ毎日:タンクの水の入れ替えと振り洗い、トレイに残った水を捨てる。水は水道水で(取扱説明書は、40℃以上のお湯・浄水器の水・ミネラルウォーター・井戸水などを使わないように、と書いています)週に1回:吸い込み口のほこり2週間に1回:フィルターとトレイの仕切板の水洗い月に1回:フィルターのクエン酸1シーズン:カバーと抗菌アタッチメント(タンクの水の雑菌を抑える、と作り手が書く部品)の交換5シーズン:フィルターの交換
- 保証と部品本体は、買った日から3年。消耗部品の取り替えと、移動や落下などによる故障は、保証の期間中でも有料。修理に使う部品は、作るのをやめてから9年持っている、と作り手は書いています
- 形と作る所外形の寸法は、2015年の型(HD-RX515)と同じ。作り手は「設計から組立、検査まですべてを新潟県の自社工場で」と書いています
- 困ったときまず作り手の公式サイトの「お問い合わせ」へ。修理は、作り手へ送る形(片道の送料は自分で。修理代の目安は6,000〜15,000円)。カバーやフィルターは、作り手の公式ショップで買えます

