あしたの、同じ時間に

12月に入ったばかりの朝、娘のあやめの声がかすれた。リビングの窓は、下のほうから濡れていた。乾いているのか、湿っているのか。部屋の空気を数字で見たくて、みはるさんはスマホで温湿度計を頼んだ。それが、きのう届いた。リビングのテーブルの端に、ソファのほうへ向けて置いた。夕方の湿度は、38だった。

「あしたの同じ時間に、また見てみよう」

そう言ってから、1日がたった。夕方、あやめはソファに座ったまま、テーブルの向こうの端を見た。

「きょうは、41」

ソファからは、立たないままだった。

ソファに座ったあやめの目の高さから見たリビング。手前にひざ掛けとトマトレッドの袖の両手。テーブルが奥へ伸び、向こうの端に白い温湿度計がこちらを向いて、画面に19.6℃と41.0%。その奥はカウンターの腰壁と、台所の食器棚

「ねえ、なんで、こんなに大きいの?」

「ソファからでも、読めるように」

あやめは、画面の下の段を指さした。大きな数字の下に、小さな数字が並んでいる。

「下の小さいのは?」

「最高」と「最低」。みはるさんは、取扱説明書を開いた。電池を入れたときから、いちばん高い数字と、いちばん低い数字を覚えている、と書いてある。きのう電池を入れたのは、置き場所を探す前だった。手で持っていたときの数字も、入っている。置いてから、部屋の空気になじむまで待ったあいだの数字も。

説明書のとおり、クリアキーを2秒以上、押し続けた。最高と最低は、今から覚え直しになる。

同じ説明書の「特長」に、こうある。「文字が大きく見やすいので、離れた場所から表示を読むことができます」。

「作った人は、どこで読ませるつもりだったんだろう」

作り手が挙げた、使う場所

作ったのは、佐藤計量器製作所(本社は東京)。この1台の製品のページにも、「離れた場所からでも」とある。

使う場所の例に、作り手は「学校・各種施設、飲食店、オフィス・会議室など」を挙げている。どれも、何人もが、同じ部屋で過ごす場所だ。

みはるさんの家のリビングでも、夫と双子と、4人が、それぞれの場所で過ごしている。

ガラスの温度計から

この会社は、1948年に、ガラスの温度計の専門メーカーとして始まった。今は温度計のほかに、湿度計や、暑さ指数を測る物も作っている。

2002年には、湿度計のずれを測る側にもなった。この会社の校正の部署が、国の制度(JCSS)の校正事業者になった。この型も、その確かめ直しの対象だ(買ったときに、証明書はついてこない)。

説明書には、困ったときの行き先も書いてある。測れる範囲の外の表示が消えないときも、修理や校正のときも、「お買いあげ店または弊社」へ。数字がおかしいと思ったときの相談先のひとつが、ずれを測る側の会社だ。

次の朝、下の段

次の朝。みはるさんがカーテンを開けていると、あやめが、テーブルの端の画面に顔を寄せていた。

冬の朝のリビング。白とグレーの縞のパジャマのあやめが、袖を手の先まで引いて、テーブルの端の温湿度計の画面に顔を寄せている。左に下のほうが曇った窓と白い円筒の加湿器、奥にクリーム色のソファ

「ゆうべの、いちばん下。16度」

あやめは、パジャマの袖を、手の先まで引っぱった。

「今夜は、靴下はいて寝る」

みはるさんは、何も言わずに、カーテンを最後まで開けた。

合う家、合わない家

大きな画面を、目につく所に置けるなら、合う1台

小さく目立たない物がほしい家や、冬の部屋の湿度を細かく確かめたい家には、向きません(下の「合わないのは」に)。

合うのは、こんな家

  • 座ったまま、少し離れた所から読みたい。画面は横18cm、縦9cmほど(下の図)。大きく出るのは、今の温度と湿度です。テーブルに置くほか、壁にも掛けられます。
  • 子どもにも、数字を読んでほしい。大きく出るのは、温度と湿度の2つだけ。時計や天気の表示はありません。
  • 今の数字だけでなく、いちばん高い・低い数字も見たい。最高と最低が、今の数字と一緒に出続けます。消したときから覚え直すので、いつから数えるかは自分で決められます(クリアキーを2秒以上)。アプリは要りません。
白い温湿度計の本体(約230×164mm)を、A5のノート(148×210mm)と同じ縮尺で並べた絵。画面の上の段が今の温度と湿度、下の段が左に最高・右に最低、右下の丸いボタンがクリアキー
本体を、A5のノートと同じ縮尺で。数字は例

合わないのは、こんな家

  • 小さく、目立たずに置きたい。白い樹脂の、本のような大きさの横長の箱です(上の図)。
  • 冬の部屋の湿度を、細かく確かめたい。湿度の確かさは、湿度40〜80%・室温20〜30℃のとき「±5%」(作り手の幅では、画面が50なら45〜55のどこか)。それ以外は「±8%」(画面が38なら30〜46のどこか)で、冬の部屋は条件の外になりやすい。画面は小数点の下まで出ますが、それは細かさで、確かさではありません。38と41の差が、部屋の空気が変わった分なのかは、1回くらべただけでは分かりません。物語のみはるさんは、同じ1台を、同じ時間に見つづけています。
  • 一日の変わり方を残したい、スマホで見たい。数字の移り変わりを残す機能も、通信もありません。
  • 時計や暑さ指数も、1台で見たい。表示は温度と湿度、その最高と最低だけです。
  • 値段を抑えたい。手のひらに乗る物より、値は張ります。値段は、下の「買える所」に店ごとに書いています。

この1台の要点

  • 型番佐藤計量器製作所 デジタル温湿度計 PC-5410TRH(製品番号1074-10)
  • 確かさ(精度)湿度 ±5%(湿度40〜80%・室温20〜30℃)、それ以外 ±8%。温度 ±1.0℃(10〜40℃)、それ以外 ±2.0℃
  • 大きさ約230×164×27mm・約510g(電池を含む)。卓上(背中のスタンド)と壁掛け(背中の穴)の両方。保証は買ってから1年

この1台を買える所

もう少し詳しく

  • 表示今の温度と湿度、それぞれの最高と最低(いつの数字かは出ない)。約30秒ごとに新しくなる。画面を光らせる機能(バックライト)は、説明書に書かれていない
  • 買える所計測器の通販や、専門の店が中心です。大手のホームセンター3社の通販では、見つかりませんでした(2026年9月、えらびのたね調べ)
  • 警報上限と下限を、温度0.0〜50.0℃・湿度20.0〜95.0%の間で決める。知らせるのは、ブザー(音は大・小・なし)と、ランプの点滅(点滅はなしにできない)。警報は、買ったときは使わない設定
  • 使う場所屋内(説明書)
  • 困ったとき画面に「Lo」「Hi」「--」(測れる範囲の外)が出て、範囲の中でも直らないときと、修理・校正のときは、買った店か作り手へ(説明書)
  • 校正「JCSS校正:対応」。個人で頼めるか・費用は、作り手の問い合わせの窓口で
  • 電池単3形電池3本。アルカリ電池で約2年(警報が1日1回働く使い方での作り手の目安。付いてくる電池はお試し用で、それより短いことがある)