平日の朝の、ベランダで

平日の朝、7時前。みはるさんは、洗濯カゴを抱えてベランダに出た。

みはるさんの家は4人家族。夫のさとるさんと、小5の双子の兄妹、かえでとあやめ。平日の洗濯は、みはるさんの番だ。朝のうちに干して、夕方に取り込む。

ゆうべ、畳むときに、体操服の背中の半分だけが、まだ少ししっとりしていた。朝、ハンガーが足りなくて、タオルと重ねて1本に掛けた。その、重なっていた所だった。

今朝は、干す前に数えてみた。物干し竿は、1本。ハンガーは、18本。プラスチックのと、クリーニングでついてくる針金のが、混ざっている。

足元には、小さな丸いピンチハンガー。いつも竿の端に掛ける。ピンチが4つ割れて、外してある。割れはじめてから、濡れて重い物は、留めないようになった。残ったピンチには、靴下と下着だけ。肌着とフェイスタオルは、ハンガーに掛けている。

竿に掛けた小さな丸い水色のプラスチックのピンチハンガーの寄り。ピンチがいくつか外れて、小さな輪だけが残っている。残りのピンチに、靴下がゆったり留めてある

このピンチハンガーをいつ買ったのか、みはるさんは覚えていない。

干していくと、今朝も、最後のハンガーを取ったところで、まだタオルが1枚残った。シャツは、隣と肩がふれている。

「ハンガー、あと何本あればいいんだろう」

あなたの家のハンガー、何本ありますか?

選ぶ前に、見る所

本数より先に、竿の幅を測る

ハンガーが足りないとき、まず思いつくのは、買い足すことです。その前に、竿を見ます。

「何本」は、竿の幅で決まる。1枚ずつか、まとめてか

洗濯物は、重なりを少なくして、風の通り道をつくるように干す、と洗剤のメーカー(ライオン)は書いています。部屋干しの目安としては、洗濯物どうしの間は「こぶし1つ分」といわれます(花王)。「10cm以上」と書く家電のメーカーもあります(日立)。外に干すときの数字の目安は見つけられなかったので、ここでは、この部屋干しの目安で数えます。

間をあけて掛けるなら、竿に掛けられる数は、竿の長さで決まります。たとえば、竿の掛けられる所が2mで、ハンガーを竿に直角に向けて、間を10cmほどとると、20本くらいまで。服の厚みの分、実際はそれより少なめです。服を竿に沿って広げて掛けるなら、もっと少なくなります。

ハンガーを買い足しても、竿は長くなりません。

靴下や肌着、フェイスタオルのような小さな物は、ピンチハンガーにまとめると、竿の短い幅に、たくさん干せます。1枚ずつハンガーに掛けるか、まとめて留めるか。足りないのが本数か、竿の幅かは、今夜、竿の長さを測ってみると分かります。

掛ける所は、竿の長さと、風で

ピンチハンガーには、真ん中の1か所で吊る形と、2か所で竿に掛ける形があります。ピンチハンガーのメーカーの説明では、1か所で吊る形は、竿に直角にも掛けられて、竿の幅をあまりとりません。そのぶん、風で回りやすく、回ると隣の服に当たることもあります。重い物は、左右に分けて留めます。2か所で掛ける形は、傾きにくい代わりに、竿に沿って幅を使います。朝干して、夕方まで家を空ける日が多いなら、この違いは大きくなります。

物干し竿を3段、前から見た図。上の段は、小さな丸いピンチハンガーに靴下、ハンガーに服とタオルがすき間なく並ぶ。中の段は、四角いピンチハンガーを竿に直角に掛けて小さな物をまとめ、服の間があいている。下の段は、四角いピンチハンガーを2か所で竿に沿って掛け、そのぶん服の数が少ない
竿を、前から見たところ

掛けられる竿の太さ、全体で留められる重さ(耐荷重)、本体の重さも見ておきます。濡れた物を全部留めたまま、毎朝、持ち上げるからです。風の強い日は、取り込みます。製品安全協会の物干しの安全の基準(SG基準)でも、取扱説明書にそう書くよう求めています。

ピンチは、素材と、替えを1つずつ買えるかで

プラスチックは、日差しや熱、雨や風で傷んで、ピンチが割れたり、砕けたりすることがあります。コープこうべの商品検査センターの紙面は、「買ってから半年しか経っていないのに」ピンチが割れた、という声から始まっています。何年もつかは、使う場所しだいです。割れるたびに、留められる数が減っていきます。

洗濯ばさみ2つを並べた図。左は水色のプラスチックの洗濯ばさみで、片方の腕にひびが入り、欠けた小さなかけらが落ちている。右は銀色のステンレスの針金の洗濯ばさみ
割れたプラスチックのピンチと、ステンレスのピンチ

合成樹脂のピンチには、傷みを試す基準(SGマーク)もあります。マークがあれば、その試験には通った物です。ただ、割れないことを約束するものでは、ありません。プラスチックの物は、使わないときは屋内の日の当たらない所にしまうように、と、同じ紙面にあります。

ハンガーやピンチハンガーには、素材を表示する決まりがありません(家庭用品品質表示法の対象に入っていません)。作り手のページや袋で、ピンチの素材を見ます。それから、割れたピンチの替えを、1つずつ買えるか。付け替え方も、作り手のページで見ておきます。ステンレスも「さびにくい」素材で、「さびない」わけではありません。

家によって、答えは変わります。

  • 部屋干しが中心の家は、部屋の物干しの形と太さ、全体で掛けられる重さから。プラスチックの物も、日の当たらない部屋の中なら、傷みは遅くなります(同じ紙面は、屋外の長い放置や直射日光が傷みを早める、と書いています)。
  • 竿が2本ある家は、2本に渡して掛けられる形もあります。
  • 風の強いベランダなら、回り止め(竿の上で回らないように押さえる部品)の付いた形や、2か所・3か所で竿に掛ける形が合うこともあります。
  • 毎朝持ち上げる重さが気になるなら、アルミの枠も。アルミは、同じ大きさの鉄の、約3分の1の重さです。プラスチックでも、ピンチを替えられる物があります。

何本かは、竿の幅で。掛け方は、竿と風で。ピンチは、素材と、替えのピンチで。

出典(名前を押すと、資料の説明のページへ)

週末の、竿を測る

その週末の朝。週末の洗濯は、さとるさんが回して、干してくれる。

洗濯機が止まる前に、みはるさんは台所の引き出しから巻き尺を出して、ベランダに出た。竿受けから竿受けまで、竿を測る。2mと少し。竿の太さも、見ておいた。

端には、小さなピンチハンガーが掛かる。残りに、こぶし1つ分ずつあけて掛けるなら、ハンガーは16本くらい。平日の朝は、それより多く掛けている。

洗濯カゴを抱えたさとるさんが、窓からベランダに出てきた。カゴを置くと、足元のピンチハンガーを拾い上げる。

「ピンチ、だいぶ割れてるな」

さとるさんも、前から気づいていたらしい。

週末の朝のベランダ。クリームベージュのニットのみはるさんが、巻き尺の先を左の竿受けに掛け、本体を胸の前に持って読んでいる。開いた窓から出てきたさとるさんが、足元に洗濯カゴを置き、小さな水色のピンチハンガーを手に持って見ている

「ハンガー、安いの、まとめて買ってくれば?」

「掛ける所が、もうないの」

みはるさんは、竿を指さした。さとるさんは、竿の端から端まで、目で追った。

「……足りないのは、竿のほうか」

竿受けは、この1組だけだ。借りている部屋で、増やすことはできない。

みはるさんは、カゴの中を見た。肌着が3枚。フェイスタオルが4枚。どれも、ハンガーを1本ずつ使っている。この7枚をまとめて留められたら、竿に掛けるのは12本。そのぶん、シャツと体操服の間があく。

その日の午後、みはるさんは、あやめと、台所や暮らしの道具を置く店へ行った。あやめは「自分の靴下は、自分で留める」と言って、ついてきた。

ピンチハンガーの棚には、プラスチックの物と、ステンレスの物が並んでいた。値札の数字が、ひと桁ちがう物もある。

みはるさんは、ステンレスの、四角い枠の物の前で止まった。札には「角ハンガー」とある。枠もピンチも金属。竿に掛ける所は、真ん中の1か所。竿に沿っても、直角にも、向きを変えて掛けられる。竿に沿わせても、残りに12本なら、こぶし1つ分ずつ間があく。同じ形で、大きさの違う物が2つ並んでいた。フックの大きさを、朝に見た竿の太さと比べた。掛かりそうだ。

あやめが、大きいほうのピンチを1つ、指でつまんで開いた。何度か開いて、閉じた。

台所や暮らしの道具を置く店の、ピンチハンガーの棚。プラスチックの丸いピンチハンガーと、銀色のステンレスの四角いピンチハンガーが大小並ぶ。ラベンダーの長袖のあやめが、大きいほうのピンチを指で開いて、クリームベージュのニットのみはるさんが、スマホを手に、それを見ている

みはるさんは、スマホで作り手のページを開いた。小さいほうは「1〜2人分」、大きいほうは「3〜4人分」。ピンチは、1つずつ部品で買える。修理の相談も受けている、と書いてあった。取扱説明書も、そこで読めた。風の強いときは、取り込むこと。風の強そうな日は、朝のうちに、部屋に干せばいい。

値札を、もう一度見た。前のピンチハンガーより、ずっと高い。

それでも、ピンチが1つ傷んだら、そこだけ買い足せる。

みはるさんは、大きいほうを、あやめに持たせた。あやめは両手で持って、「けっこう重たい」と言った。

次の平日の、朝

次の平日の朝。7時前。

みはるさんは、新しいピンチハンガーを、竿の端に、竿に沿わせて掛けた。直角に向けると、枠が腰壁の上に張り出す。外側の枠に、肌着とフェイスタオル。内側に、靴下と下着。重さが片寄らないように、左右に分けて留めていく。

それから、シャツと、ブラウスと、体操服。こぶし1つ分ずつ、あけて掛けた。体操服は、1本に1枚。

最後の1枚を掛けて、カゴをのぞいた。

底に、まだハンガーが6本、残っていた。

平日の朝のベランダ。竿の左の端に、銀色の大きな四角いピンチハンガーが掛かり、靴下や肌着やフェイスタオルが留めてある。シャツや子どもの服やタオルのハンガーが12本、間をあけて並ぶ。足元の白い洗濯カゴの底に、空のハンガーが何本か残っている