夏休みの最後の週の、朝の床で

夏休みの最後の週。小5の双子の、兄のかえでと、妹のあやめ。母のみはるさんは、朝、リビングの床に紙を1枚敷いた。

夏の朝のリビング。木の床に敷いた白い紙の上に、灰色のTシャツのかえでが裸足で立っている。青灰のTシャツのみはるさんが膝をついて、足の指の先に定規を立て、鉛筆で印をつけている。淡い黄色のTシャツのあやめが、後ろで手を組んで自分の番を待っている。紙の横に、去年の白い上履き

昨日、学校のプリントを広げた。「二学期の持ち物について」。上履きの行には、こうある。「白のバレーシューズ。つま先の色は自由。名前を書く。週末に持ち帰って洗う」

去年の上履きに、かえでは片足だけ突っ込んで、すぐ脱いだ。「きつい」。

「上履きは、明日私が買ってくる。サイズだけは、ちゃんと測らせて」

昨日、そう約束した。

ラグの外の、固い床の上。紙に、鉛筆で直角の線を引く。

「ここに、かかと。線の角に合わせて、立って」

かえでが、紙の上に立った。両足に、同じように体重をのせる。みはるさんは膝をついて、定規を立て、いちばん長い指の先に印をつけた。かえでは、親指より、隣の指のほうが少し長い。そこで測る。

右が22.4cm、左が22.3cm。

あやめも、紙の上に立った。21.6cm。あやめの上履きは22.0で、まだ足りている。底も布も、すり減っていない。

去年の上履きの中敷きに、かかとのほうに小さな数字がある。「22.0」。

去年は、すぐ大きくなるから、と、ひとつ大きいのにした。秋までは、走ると、かかとが浮いた。冬が過ぎて、ちょうどよくなった。いつから小さかったのかは、分からない。かえでは、何も言わなかった。

みはるさんの頭には、もう、次の数字が浮かんでいた。23.0。去年と同じに、ひとつ大きく。

紙の上で、22.4cmの印から、23.0cmの所まで、鉛筆の先を動かしてみる。

木の床に敷いた白い紙。直角の線と小さな印のそばで、鉛筆を持った手が止まっている。横に、少しくたびれた去年の白い上履きと、透明の定規

「22.4の足に、23.0。……大きいほうで、いいんだっけ」

あなたの家の子どもの足、最後に測ったのは、いつですか?

選ぶ前に、見る所

大きめより、足の長さの数字で

大きめにする必要は、ありません。靴のサイズの数字(中敷きや底、札にある数字)は、その靴が合う足の長さの目安です。22.4cmの足なら、まず22.5を見ます。23.0は、23.0cmの足のための靴です。数字の間に来たら、上の数字を見ます(22.6cmなら23.0)。

見る所は3つ。学校の決まり、大きさの合わせ方、次に測る日です。

決まりは、学校のプリントで先に見る

上履きの決まりは、学校によって違います。色は白か、白を基調に。形はバレーシューズ型か、甲を覆う形か。つま先の色で学年を分ける学校も、色は自由という学校もあります。今の学期のプリントに書いていなければ、入学のしおりや、学校のホームページの「学校のきまり」を見ます。分からなければ、連絡帳で担任に聞いてかまいません。

品番や買う店まで決まっているなら、その店で。この先の2つ、大きさと測る日だけを使ってください。「ゴム底」とあれば、箱や札の「底」の欄を見ます。「ゴム」とあればゴム底、「合成底」「塩化ビニル」はゴム底ではありません。書いていなければ、店に聞きます。

形が決まっていない学校なら、選べる幅があります。日本学校保健会の2009年の冊子は、甲にゴムのバンドが1本の「バンドバレー型」について、安くてどこでも買える良さを挙げたうえで、「足の指の自由がかなり制約されるものもあり、クッション性も充分とはいえないようです」「靴底が滑りやすく踵も脱げやすいものが多い」とし、体育館の授業では注意を、と書いています。2019年の冊子も、小学生の靴は面ファスナーの型がよい、としています(上履きに限らない話です)。足と靴と健康協議会は、子どもの靴には、ひもなどの調整具が付いた物を、とし、学校の指定靴や上履きは、親や学校の都合が優先されているのが実態だ、と書いています。

形が決まっている学校では、その形の中で、大きさを合わせます。上履きで体育をする学校なら、かかとが脱げないか、底が滑りにくいかも見ます。体育館シューズを別に持つ学校なら、同じ日に、そちらの大きさも見ます。

大きさは、サイズの数字を、足の長さで

サイズの数字は、靴の長さではなく、合う足の長さです。つま先の余裕は、靴の側に足してあります。

協議会は、靴のサイズの表示を、その靴に合う足の長さと太さの「目安」と書いています。日本の靴は、足の長さと太さで表す「足入れサイズ」で、靴の長さには、つま先の余裕が足してある、とも。どれだけ足すかは作り手や形で違うので、最後は履いて見ます。

保健会の2019年の冊子は、子どもの靴のつま先に「1cm弱くらいの余裕」と書き、「余裕を持たせすぎないように注意します」「成長を見越して大きすぎる靴を選ぶと、足を痛めることになります」と続けます。協議会も、ゆるい靴は中で足が動いて疲れるだけでなく、「いざという時に機敏な動きができず事故に繋がる恐れがある」と書いています。

横から見た白い上履きの図。中に、足の形が点線で描いてある。かかとは靴の後ろにつき、つま先の先に赤で「つま先の余裕 1cm弱(靴の中)」。下に「足の長さ 22.4cm」の矢印と「→ サイズの数字は「22.5」を見る」
サイズの数字は、合う足の長さ。つま先の余裕は、靴の中で見る

幅も見ます。サイズの数字のあとの「E」や「2E」は、幅(足の太さ)の目安です。幅がきついからと長さを上げると、つま先が余って、大きめになります。

家での測り方

  1. 固い床に紙を置き、直角の線を引く。
  2. かかとの後ろを横の線に、足の内側を縦の線に沿わせて、まっすぐ立つ。指を縮めていないかも見る。
  3. 定規を立てて、いちばん長い指の先に印をつける。親指とは限りません。
  4. 線から印までを、まっすぐ測る。両足とも測り、長いほうに合わせる。

履いて合わせる

  1. 学校で履く靴下で、両足とも履く。座って、かかとをトントンと合わせる。
  2. 立って、かかとを少し上げてもらい、靴が曲がる所と、指の付け根が合うかを見る。
  3. 指を動かしてもらい、甲の布が動くかを見る。窮屈でも、子どもは言わないことがあります。
  4. 部屋の中を数分歩いて、かかとが浮かないかを見る。上履きで体育をする学校なら、軽く跳んでも見る。
  5. 脱いで、指の上や小指の付け根が赤くないか、中で足が左右に動いていなかったかを見る。

覆いのある上履きは、紙で測る

つま先に覆いのある上履きは、押しても余裕が分かりません。はがきくらいの厚さの紙を細長く切り、中敷きに沿わせて、つま先の奥まで差し込みます。かかとの内側のいちばん後ろで印をつけて測ると、靴の中の長さが分かります。足の長さより1cm弱長ければ、冊子の言う余裕です。

横から見た白い上履きの図。中敷きに沿って、細長い紙がつま先の奥まで差し込んである。かかとの内側のいちばん後ろに赤い印。下に「印からつま先の端まで=靴の中の長さ」の矢印
覆いのある上履きは、紙で中の長さを測る

合わないときは

指の上が赤い、つま先が当たるなら、ひとつ上に。小指の付け根だけが赤い、甲がきついなら、長さはそのままで、幅の広い型に。かかとが浮く、紙で測った中の長さが大きく余るなら、ひとつ下も試します。数字に足を合わせるのではなく、足に合う数字を探します。

21cmより小さい子は

21cmより小さいサイズでは、1cm刻みの上履きもあります。足が19.3cmなら、数字は20。余裕が大きくなりやすいので、紙で中の長さを見て、余りすぎるなら、0.5cm刻みの物を探します。

家で試すとき、替えるとき

いちばんいいのは、子どもを店に連れて行って、履かせて買うこと。協議会が勧めるのも、本人に履かせてから買うことです。家で試すなら、部屋の中だけで。名前を書くのは、合ってから。箱と札も、合うまで捨てません。部屋の中で試した物は、決まった日数のうちなら大きさを替える、と決めている店もあります。替えると届くまでに日がかかるので、学校が始まる日から数えて、早めに頼みます。

大きめで追いかけず、測る日で追いかける

伸びる時期の子どもの足は、1年に1〜1.5cm大きくなる、と保健会の2009年の冊子は書いています。協議会も、1年におよそ1cm大きくなり、サイズは0.5cm刻みが多いので、最低でも年に2回は買い替える計算になる、と書いています。

それでも、ひとつ大きいのを先に買うより、次に測る日を決めておきます。2009年の冊子は学校に向けて、夏・冬・春の長い休みの明けや、運動会のような行事の前に、サイズを見るよう呼びかけています。今の靴に残りが少ない子は、休み明けを待たずに測ります。

小学生でも、窮屈だと言わないことがあります。測る日には、冊子の点検表の4つを見ます。1つでも当てはまれば、替えどきです。

  • 履いたとき、足指が先にぶつかる。きつく感じる。
  • 布や中敷きが切れたり、穴があいたりしている。
  • かかとが、つぶれている。
  • 底がすり減って、形が変わっている。滑りやすい。

中敷きに残った指の跡も、よく見てあげてください。

くたびれた白い上履きの図が4つ。「中敷きの指の跡(よく見る)」は、中敷きのつま先まで灰色の跡。「つま先が切れた・穴」は、つま先の端が裂けて穴。「かかとがつぶれた」は、後ろから見てかかとが低く崩れている。「底がすり減った」は、裏返した底の前とかかとの模様が消えている
替えどきは、靴が先に教えてくれる

かかとは踏まずに、トントンと合わせて履きます。かかとを踏むようになったら、靴が小さくなっていないかも見ます。名前は左右両方に、学校の決まりの所へ。洗ううちに薄くなるので、学期の初めに見直します。

足の指の付け根やかかとの痛みが続くときは整形外科で、爪が食い込んで赤く腫れるときは皮膚科か整形外科で見てもらいます。靴を替えるのを待たなくてかまいません。保健会の2019年の冊子も、痛みが出たら受診を、と書いています。

決まりは、プリントで。大きさは、サイズの数字を足の長さで。次は、測る日を決めて。

出典(名前を押すと、資料の説明のページへ)

  • つま先の余裕・大きすぎる靴・面ファスナー・合わせ方・かかとを踏まない・受診:日本学校保健会「子供の足の健康のしおり」(2019年)
  • バンドバレー型・足の伸び・休み明けの点検・点検表・指の跡:日本学校保健会「足の健康と靴のしおり 改訂版」(2009年)
  • サイズの表示・足入れサイズ・調整具・指定靴と上履き・ゆるい靴・年に2回・本人に履かせる:足と靴と健康協議会
  • 学校の決まりの例:横浜市立本牧南小学校・日下小学校ほか、学校の入学の案内

同じ日の昼、ダイニングで

買ってくる、と言ったけれど。

本当は、かえでを店に連れて行って、履かせて買うのがいい。でも、かえでは、午後から練習だ。

みはるさんは、ダイニングのテーブルで、スマホを開いた。形は、プリントのとおりの、白いバレーシューズ。去年と同じ形の、白い上履き。作り手が出しているネットの店に、同じ形の物があった。

ダイニングのテーブルで、両手でスマホを持っている。画面はぼやけて読めない。横に、直角の線と印の入った白い紙と、定規と鉛筆

サイズの数字が並ぶ。22.0、22.5、23.0。

指が、23.0の上で止まった。去年なら、ここを押していた。

22.4の足には、22.5。

頼む前に、店の決まりを読んだ。部屋の中で試しただけで、箱や札もそろっていれば、決まった日数のうちは、大きさを替えてもらえる。

名前は、かえでが履いて、合ってから書こう。

みはるさんは、22.5を選んで、頼んだ。

届いた日の、夕方のリビングで

箱は、午後に届いた。みはるさんは、細く切った紙を靴のつま先の奥まで差し込んで、中の長さを測っておいた。かえでの足より、1cm弱長い。

夕方。練習から帰ったかえでが、手を洗って、リビングの床に座った。新しい上履きに足を入れて、かかとを床に、トントンと打つ。

「立って。指、動かしてみて」

かえでが、上履きの中で指を動かす。甲の布が、小さく動いた。「動く」。

かかとを少し上げてもらうと、靴が、指の付け根のあたりで曲がった。

「部屋の中だけ、歩いてみて」

かえでは、リビングの中を、何度か回って戻ってきた。かかとは、浮いていない。

「きつくない」

夕方のリビング。木の床の上で、青い練習着のかえでが新しい白い上履きを履いて立ち、足元を見ている。紺のブラウスのみはるさんが膝をついて、両手を膝に置き、かえでの足元を見ている。床に、開けた靴の箱

みはるさんは、上履きを脱がせて、指の上と小指の付け根を見た。赤くない。

油性ペンのキャップを取った。かかとのほうの布に、名前を書く。

夕方のリビングの床。手が新しい白い上履きを持ち、かかとのほうの布に、黒い油性ペンで名前を書いている(字は読めない)。横にもう片方の上履きと、開けた靴の箱

箱は、名前が乾いてから、たたんだ。

あやめが、自分の部屋から出てきた。

「私のは?」

「まだ、足りてる。ひと月したら、また測ろう」